丹波篠山では珍しい物を見つけた。うわさ話では聞いていたが、実物を見たのは初めて。節分になると、玄関に柊(ひいらぎ)の枝に鰯の頭を刺して飾っておくと、魔よけになるというおまじないである。

時々、家祈祷といって、篠竹に御幣を付けた物を家の四隅にまつっておられるお家は見かけるが、柊と鰯は初めてだった。
節分の夜に柊に鰯の頭を付けて飾っておくと鬼よけになるという説明があるが、どういう理由で鰯の頭と柊なのだろうか?
鰯の頭にどのような由来があり、柊でなければならない理由は何なのだろうか?ちょっと調べて見たがさっぱり判らない。せいぜいが、柊のトゲを鬼が嫌い、鰯の匂いが鬼を遠ざけるという程度である。
そんな簡単な事で鬼を近寄らせなく出来るのであれば結構なことであるが、なんとも実に微笑ましくも思える。
「そんなばかばかしいことを・・・・」と思うのだが、民俗・風習としては残り少なくなった家庭行事でもある。
今や、節分に巻き寿司を丸かぶりするというのは、大阪の海苔業者と鮨業者が京都の昔の風習を取り入れて始めたものを、コンビニが大々的に売り出すと爆発したように全国に広まったし、チョコレートメーカーがバレンタインデーにチョコレートをと宣伝すると、ネコも杓子も(禰宜も釋氏もの変化)チョコレートに群がる。
テレビでココアが良いというと、お店のココアの売り上げが急増するし、寒天がよいといえば、寒天の売り上げが急増する。市場経済が活性化する事は良いことなのだろうが、いやはや、そ消費者の移り気の早いこと早いこと。
鰯の頭と柊の飾りを見つけてからは、あちこちの玄関先を注意深く見て回ったが、とうとうその一軒のみであった。
「そんなことは迷信だ」 という事で一刀両断もあるが、人の切なる願いが表現された、何とも言えないかわいらしい風習も、最早風前の灯火(ともしび)かも知れない。
しかし、丹波篠山は山国なので、昔昔に鰯を手に入れることは大変だっただろうと思う。
2005.2