隗(かい)より始めよ


かいより始めよ」という言葉は、中国の『戦国策』という書物の中にあると言われています。中国の戦国時代に、えんの昭王(紀元前312年~279年在位)が、「国に賢い人を集めるにはどうしたらいいか」と郭隗かくかいという家臣に諮問したのです。郭隗は燕という国の政治家で、「かい」という人物です。

 郭隗は「そういう人を募集したいなら、まず私を優遇することです。私のような者でも優遇されるのなら、きっと私よりも優秀な人物が集まって来るでしょうから」と、王様に進言しました。王様は、郭隗の進言を実行してみたのです。すると間もなく多くの有能な人材が集まって来たというのです。

 やがてこの言葉は、「手近な者から優遇せよ」が転じて、「大きなことをするには、まず身近なことから始めよ」となり、「物事は言い出した者から始めよ」という意味に変化していったと言われています。

トイレの変化

宗玄寺の境内のトイレ

 自動車専用道路には、あちこちに休憩所が設けられ、トイレの横には「ドッグラン」がある所もあります。そして、飲み物の自販機も設置されています。トイレはどこも綺麗になり、気持ちよく休憩出来るようになっています。

 近頃は男性用トイレの手洗い場に、赤ちゃんの「おむつ交換台」が設置してあり、個室の中には「ベビーチェアー」が設置されている所もあります。

 「赤ちゃんのおむつ交換はお母さんの役目」というのは「性別役割分担」なのです。今や学校では「男女が共同して子育てをする」ということが学びの中に組み込まれ、料理をするのも男女が協力して行うということが学ばれています。つまり、「赤ちゃんのおむつ交換」は、男女どちらの親もちゃんと出来る世代に移行しているのです。そういう考え方から、トイレの設計理念は、すっかり変化している真っ最中なのです。

トイレットペーパー

 今から50年も前のこと。私が若かった頃の大阪駅のトイレは「水洗」にはなっていましたが、個室にトイレットペーパーは置いてありませんでした。トイレの入り口に「自販機」が置かれており、いくらかのコインを入れてトイレットペーパーを買ったものでした。

 それはきっと、「ペーパーが持って行かれるから」という、「人を見たら泥棒と思え」というのでしょうか、ペーパー代がいくらかかるか「そら恐ろしい」思いを想像したのでしょうねぇ。

 しかし、何処へ行ってもペーパーが常備されて行くようになり、持って行くことは必用なくなったわけです。実名は伏せますが、まだ自販機が置いてある駅があります。「盗られる」というのであれば、盗られないような「啓発活動」をして、市民や旅行者の意識を変えることが大事ではないでしょうか。

サニタリー

 今、声が上がっているのは「サニタリー」のことです。最近は小学4年生から始まる児童もいるといいます。突然の始まりで困る方も相当おられると聞きます。

 昨年の夏のニュースの中で、関西の男子高校生が「女性の生理」について体験したというのです。男子生徒が生理用品にクリームを塗って、それを一日身につけてみたというのです。

 「君らはこんなことを毎月やっているのか?!」

と、女生徒の生活が実感できたというのです。教育はそこまで実体験させるように試みられている学校もあるのです。

 女性トイレの中に、「お困りの方」のために生理用品を常備して行く試みがあちこちで始められています。

 私の町でも「優しい施策」が始まっています。大阪の某私鉄の駅には「社会実験」として始められたそうです。某自動車メーカーの営業所は、トイレにサニタリー用品を置くことを全国展開しているそうです。

 泉大津市では令和3年11月に、市役所庁舎1階女子トイレ、駅前図書館シープラなどの公共施設の女子トイレ・多目的トイレに、生理用ナプキンを無料で提供するサービスを「OiTr」というメーカーと提携し、運用を開始しました。担当は人権くらしの相談課でした。

 また、泉大津市役所では、すべての小中学校で必要な時に必要な児童・生徒がいつでも生理用品を使えるよう、全小中学校に生理用品を設置するにあたっては、同年10月から12月の2ヶ月間、市内の小学校1校、中学校1校をモデル校として実検し、特段問題もなかったため、令和4年1月から市内全小中学校で実施することになったということです。

 中学校のモデル校では、校舎内の女子トイレ全室に、メッシュのポーチに入れた生理用品を個室に吊り下げるなど、いつでも必要な時に使えるような状態にし、生理用品の補充は、保健体育委員が担っているとのこと。

 小学校のモデル校では、小学4年生以上が使用する女子トイレの個室に設置し、清掃担当の児童が補充に協力しており、その他の学校でも、職員室に近い一部のトイレの洗面台にサニタリーボックスを設置するなどの取組みを行っているとのことです。

 経済的な理由だけでなく、恥ずかしくて言い出せない子や、生理用品を持ち歩くのが嫌で長時間交換しない児童・生徒も、女子トイレに設置することで、ストレスなく自由に使えるとのことで、今後は、モデル校の取組みを全校に広げていく方針とのことでした。(泉大津市へ電話での問い合わせでの回答です)

施策のひとつとして

 先月、丹波篠山市役所の人権担当の部署でそんな話をしていましたら、

 お申し出になられたら用品をお渡しするようにしています。

と言われました。

 健康福祉センターでは、カードを置いていて、そのカードを提示してもらえば大きな1パックをお渡しすることになっています。

と。

 そのことは新聞記事にもなりましたので、私は知っていました。

 「良かった 良かった」と声援を送るのですが、もう一歩踏み出せば、トイレットペーパーが常備してある社会の景色と同じように、「優しい」地域になるのです。世界的な目で見ると、それは特別なことではないのです。

 欲を言うと、「カウンターのところで意思表示をしなくても、トイレへ行けば置いてある。言い出しにくいことを言わなくても良いのではないか?」と、私は思うのです。

 トイレの個室に入れば、ペーパーが常備してあるように、サニタリーも常備してあれば、それこそ「痒いところに手の届く」ホンノリとした町になるのではないでしょうか?

隗から始めることに

ドアにも表示しました

 隗から始めることにしました。スーパーの薬局に行って商品を買いました。どれが良いのかは男の私には分かりません。適当に選んでレジへ持って行きました。(買い物を奥さんにたのまなかったのですよ)

 「これはハネが付いていますが、これでよろしいか?」

と、店員さんに言われたのですが、ハネがどういうことなのか、「多分・・・」という想像は出来てもよく分かりません。テレビのCMで知っている程度ですから。

 篠山のある中華料理店に行くと「篠山名物ハネ付き餃子」というものがあります。私は思わずそれを連想してしまいました。(不謹慎ですねぇ)

 次に100円ショップへ行き、用品を4-5個入れておける箱を見つけました。そしてトイレの壁にくっつけるためのフックも買ったのです。

 知り合いの女性に、
「小さなビニール袋に一個ずつ入れておけば、後始末用の袋にもなって・・・」
との助言も頂いて、ビニール袋の小さいのも。

 先日、それをセットしました。テープラーで扉に「サニタリー常備」と掲示し、中には「お困りの方はどうぞ」と貼り付けました。

 その作業の時に、サニタリーボックスの中を覗いて見たら、どなたかが使われた使用済みの物が紙に包んで入れてありましたので、こんな所のトイレでも役に立っているのだなぁと思った次第です。

 狭いトイレですから、「ベビーチェアー」や「交換ベッド」を設置するスペースはありません。トイレがこういうことになるとは、想像だにしなかったのですから。

式トイレの中
和式トイレの中

誰でもトイレ

 男性用・女性用との区別の外に、「多目的トイレ」とか「多機能トイレ」という名称が掲示してあるのがほとんどです。私は「屁理屈屋」ですから、「多目的とはどんな目的か?」と思ってしまうのです。「よろしくない」ことも出来る場所なのか?と。「多機能トイレ」とは、シャワーがあったりとか、いろんな機能が備えられている所なのか?」と思ってしまうのです。

 LGBTの方も、介助の必用な高齢者の方も、車いすを使用している方も、誰でも使えるトイレがあったら良いと思った時、このトイレは「誰でもトイレ」と名付けた方が良いなぁと思ったのです。

ユニバーサル社会にむけて

 「ユニバーサル社会」ということが言われ随分の年月が経過しました。車いす用のスロープから始まって、駅のホームの転落防止のためのホームドアの設置が進んでいます。設置のための経費に充当するために、運賃を10円値上げをした鉄道会社も出て来ました。

「男尊女卑」の世紀はもう終焉の時が来ています。どうぞ男性の市長さんは、あの高校生のように女性の生理を疑似体験されてみては如何でしょうか。そして女性市長さんは、遠慮しないで施策を進める勇気をもって欲しいものです。

 「G20」とか「G7」とか言われて先進国気分になっていますが、女性の人権の観点では世界の「ベベタ」を頑なに守っているのが日本であることをもう一度確認してみませんか?

 近所で遊んでいる子どもたちや、孫娘のことを思うと、こんな世の中を作っておいてやりたいと思うのですねぇ。ウチの爺々たちは、「CO2」や「核のゴミ」を残して行って、私たちはもう困っているのだ、と言われるのは間違いないですからねぇ。

 どうぞ、この期に及んで、「検討します」「相談します」と言い訳しないで、みんなでやってみてはいかがでしょうか?

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました