まだ「置き土産」という段階ではないが、新型コロナの影響はこんなところにも出て来た。それは須弥盛をイミテーションに変更したことだった。ずーっと昔は本物だったと思うが、戦後長く須弥盛をお飾りすることが途絶えていた。
隣寺の門徒さんの古老に作り方を教えてもらって、本物の須弥盛を復活させたのはもう30-40年も前のことであったろうか。厚さ1㎝、直径3㎝ほどの持ちを、板に挟んでたくさん造り、長い竹串にさして、茅で造った芯の周りに積み重ね、小さなミカンを並べて1日がかりで作っていた。
ところが、やがて門徒さんもお手伝いしていただくのが困難になって来たので、コンパネを材料にした「イミテーション」が販売され、上の方だけお餅を並べ、ミカンを並べれば良いものが出て来た。 これを20年ほど使っていたが、やがて「新型コロナ」が出現して、「コネコネと触りまくったお餅のお下がりは・・・・」と忌避されるのであった。この頃はちょっと小さめ「丸餅}を餅屋さんに搗いてもらっていたが、2年目はビニール袋に入れて納品された。衛生的には良いのだが、これは積めないのだ。つまり滑って滑って。そこへさして、ミカンのSサイズが手に入りにくくなった。須弥盛がとても出来にくくなってしまった。
私に須弥盛の仕方を教えてくれた隣寺の古老はみんなお浄土へ帰られて、須弥盛は全てイミテーションになっていた。報恩講の出仕の時につぶさに観察したのであった。ミカンもお餅の全てレストランの食品見本と同じように作ってある。調べて見ると意外に高価なのだ。本物を荘厳したいのは山々なのだが、これも時代の趨勢なのかと意を決して販売元へ発注した。門徒さんがお供えしてくれた浄財を積み立ててある中から充当する。
「今年の報恩講には間に合わないかも知れませんが」ということだったが、なんとか間に合わせていただいた。お参りの方々に持ち帰っていただく「お下がり」は別に「片木(へぎ)」に盛っておくことにした。