長い間お世話になった元々セコの軽トラが天寿を全うして、とうとう引き取られて行った。あった物がなくなると何かにつけて不自由になった。
ゴミ出しや、いろんな作業、近回りの買い物など、公私にわたって活躍していたので、自動車屋さんに「セコのセコ」が出たら紹介して欲しいと頼んでいたら、廉価な物件が出たというので斡旋してもらった。
まさに農家でつい最前まで田圃へ行っていた軽トラが、車検の変更をしてやって来た。キャビンは泥と藁で、ネズミの巣をひっくり返したような・・・。ラジオは鳴ったり止まったり。
まずは大掃除から
まずは大掃除から始めることに。運転席のフロアマットはすり減って穴が空いる。エンジンカバーは錆でこれも穴が・・・。ラジオの不調の原因は後回し。エンジンキーやドアーはキーが相当摩耗していてスッとは回りにくい。あれこれやっていたらとうとう回らなくなってしまった。これは新品を取り寄せて交換することに。
ドアを閉めると「半ドア」になる。よくよく観察すると、ドアの蝶番のピンが摩耗していて、ドアが下がっているのだ、ドアにしがみついて乗り降りするとチビてくるという。前のオーナーは「おじいちゃん」だったと言うから「さもありなん」だ。蝶番も注文する。
とにかく全部自分でリフォームするのだ。
エンジンの点検口の回りは相当サビが来ていて穴が空いている。サビをワイヤーブラシをディスクグラインダーつけて落とし、穴はファイバー・パテで補修をしてラッカーで仕上げる。
カバーは修復不可能なので新品パーツを取り寄せてもらった。塗装をしたが、色番号は適当なので、三島女郎衆の顔のようになった。
エンジンの上に小鳥かネズミが藁を積んで巣を作っているではないか。コンプレッサーで吹き飛ばし、高圧洗浄機で洗い流し。キャビンの中も徹底的に掃除だ。フロアマットも注文。
ハンドル回りのカバーを外して、エンジンキーのシリンダーを取り外す。これがなかなか大変で、キーがACCの位置に来ないと抜けないのだ。
「5-56」を噴射したのがダメだった。ウンともスンとも回らない。コネコネと辛抱強くやってACCの位置へ持って来るのだった。
取り外したエンジンキーのシリンダー部。ちょっとわかりにくいが右がシリンダーケース、真ん中の筒のような物がシリンダーの心臓部だ。
ドアーの内張も外して、左右のキーも取り除いた。どのみち、キーは1セットでやって来る。
ラジオは、時計は表示するが音は出ない。いや、2時間ほどは出たのだが、後はウンともスンとも。
テスターでチェックし、あれこれ試行錯誤の1日。アンテナ駆曲がっていて出て来ない。「5-56」を使って引っ張りだし真っ直ぐに。時間はドンドンと・・・。
ラジオに悪戦苦闘
てこずったラジオ。調べた結果は、ラジオも具合が悪くなっていたが、配線をネズミが囓っていて、B+がまともにラジオに来ていないのだった。場所を特定することは不可能に近いので、バッテリーからB+を別途引いてきて、作業灯とラジオのB+へ持ってくることにした。配線はなるべく見えないようにと本来の配線に沿わすのがなかなかの作業であった。思案しながらの1日半だった。配線をすべく、シフトレバーのカバーをはずすと、またも藁くずが・・・。
作業のコツや工具
難しかった作業は、配線を隠すことだった。「呼び線」を通してピラーの中を通したり、シフトレバーのカバーを外すのがなかなかだ。キーがACCの位置へ回らないから外すのに時間がかかった。エンジン点検口の蓋の回りにゴムパッキンを付けるのは、両面テープのような物を使うのだか、これがすっきりとなじみにくい。何度も練習すれば出来るのだろうが、なにせ「ぶっつけ本番」という「宿命」が素人作業なのだ。本職が上手く出来るのは何度も経験しているからだ。
小型の充電ペンインパクトドライバー、ディスクサンダー、ソケットレンチ、メガネレンチ、エアーコンプレッサー、高圧洗浄機などは必需品だ。パーツは自動車屋さんを通して型式にあった物を手に入れるが、その他の小物はホームセンターや自動車パーツ店で入手できる。大事なのは、ドライバーの先に磁石をつけておくことと、磁石のつけてある「小物トレイ」を用意しておくとネジなどの紛失を予防することが出来る。
ネジには同じ径であるが長さの違う物が使われている場所があるら、外した物はその場所に半分ほどねじ込んでおけば、後で取り付ける時に迷わないで済む。
最後に大変だったことがある。キーを挿したままドアを開けて作業をしていると「ピーピー」と警報が喧しい。ドアスイッチの配線コネクターを外して対応するも、その場所を作業灯の配線のために手を突っ込んだり・・・。ところがスイッチへの線が押し込まれて。
小型の懐中電灯と携帯のカメラで中の様子を観察しながら針金で作った引っかけ治具でコードを引っかけて引っ張り出す。作業をしながら思い出したのは、先月やった大腸ファイバーでの検査のことだった。医者も多分こんな具合での手探り作業だったのだなぁと。こういう場所では、コードを外すときは、紐にくくり付けて逃げ込まないようにしておくべきだった。
お化粧をして まずは完成
ダッシュボードなども専用ワックスを塗布したら結構ピカピカになった。後はドライバーシートが悲惨な状況になっているので、これのセコを手に入れて交換すれば完成だ。同じ車種でも、年式によって取り付け穴の位置に多少の違いがあるという。自動車屋さんにまかせてある。
ちょっと見はそんなにセコには見えなくなった。エンジンは快調なのでよく走る。おまけに今度は4WDなので、山野での作業では安心して荒れ地にも入って行ける。ラジオはFMもUSBもAUXも使える物に換装。このセコにはエアコンが付いている。試しにスイッチを入れると冷風が吹いてくる。走行距離は4万㎞をちょっと超えた経歴。私が動ける間は随分と世話になることが出来そうだ。
合間を縫っての作業は延べ2週間ほどになった。
交換したパーツ
キー関係一式(エンジンキー/ドアーキー/給油口キャップ)
サンバイザー
ラジオ(スピーカー内蔵型)
フロアーマット(運転席側)
作業灯(LED仕様)
ドアー蝶番
エンジン点検口カバー
ドライバーシート(物色中)
前車から外した物を再利用したもの
ソーラー充電器
ドライブレコーダー
後日談
人間の欲には際限がない。「これで良いか!」と一段落したものの、塗装のハゲや荷台の汚れが気になり始めた。キャビンは養生が大変なので論外として、荷台やアオリ(いわゆる荷物の脱落防止壁)の塗装を始めた。こびりついた汚れは油成分があるらしく、チョックラチョイとは落ちない。洗剤、シンナー、ガソリンもダメ。結局400番のサンドペーパーで「水研ぎ」をかける。
車体に型式番号等とともに色番号も刻印してあるステッカーがシートをめくったところに貼ってあるので、指定の塗料をば。磨いて塗って(スプレー缶)、仕上げはクリアーも念入りに吹き付ける。「後アオリ」に貼り付けてあったステッカーはパソコンで作った。まるで新古車のようになった。走行距離は4万㎞ちょっと。ついでにワイパーアームも塗装をば。
種明かしを一つ
汚くなっているサンバイザーは新品と交換。左席には穴だけがある。「左席用」のサンバイザーはないのだそうだ。どうせゴミになって行くのだからと廃品になったのを分解した。なんと、輪郭を4㎜径の針金で作られ、段ボールで芯が型取られ紙テープで固定。その裏表に薄いスポンジが貼り付けられて、ビニールの表装がされているのだった。じっくりかかれば綺麗な物が作れるかなと思って、基礎の部分は捨てないことにした。新品のパーツ代が4200円。ちょっとばかりびっくりした。型式が古い物は希少価値があるらしい?。100円ショップで売っていそうな細工なのに。
ステッカーも自作品を貼り付ける。苦労したのはパーツの名前を知らないということだった。「グロメット」などという言葉がわかれば見つけることも簡単だったのに。
余談
型番によって後ろのウインカーとブレーキランプの配置が逆になっているのを知った。バックライトも外して中も綺麗に掃除したのだった。
後々日談
それでも運転席側のドアーがおかしい。ヒンジを一つ交換したのだがやっぱりドアーが下がってロックのところでずれてしまう。気になり始めるとどうしようもない。よく観察すると交換しなかった下側のヒンジが摩耗しているのだった。
またぞろパーツを取り寄せて交換する。ドアーが下がらないようにジャッキで支えてヒンジを交換する。何度もネジを占めたり緩めたりして、すっきり閉まるように調整を繰り返すのだった。やっと満足する状態になった。後はセコの椅子が手に入るだけだ。