先だって、S市の病院へ友人のお見舞いに行った。が、どの病室に入っているのかを、ご家族に聞いていなかった私が悪い。面会をすべく案内所で訊ねてみた。
どなたが入院されていますか?
○○さんです。
○○さんでは解りません。
△△という病気で手術され、もう抜糸されたとか。
住所と年齢と電話番号は解るのですが、下の名前は知りません。
ずーっとお付き合いをしている近所の方なのに、一度聞いたのかどうか、もうすっかり下の名前が思い出せないし記憶になかったのです。奥さんの名前は、いつもは「○○さんの奥さん」で通じるから、名前は日常的に必須項目ではないのが災いだった。
一覧表を見ていた案内の職員が
お教えする訳にはいきません。もう一度電話等で名前を確認してください。
と言うのです。
ところがあいにく携帯電話を持ち合わせていなかった。病院のコーナーで公衆電話をかけたが、ご家族はお留守。近くの共通の友人にも電話したが、そこもお留守。
こうなりゃ片っ端から病室を探検してやろうと、エレベーターで病棟の上階まで上がって、一階ずつ巡っていけば、いつかは出会えるだろうと・・・。
ところが魔がさしたのですねぇ。
最初の階のナースステーションで聞かねば良いのに、ついつい聞いてしまった。
またも表を眺めつつ、
お教えできません。
と言うのです。
私は癇癪持ちで、いつも損ばかりしているのですが、
フルネームが解らなければ教えてもらえんのですか?
年齢も、住所も電話番号も、病気のことも、ちゃんと説明しているのだから、
該当者があるはずでしょう。?
あなたねぇ、フルネームって言うけれど、
あなたの胸に付けてあるあなたの名札は苗字だけじゃないですか?
と、ついつい、きつーい嫌みを言ってしまった。
1階下の西の方のナースステーションで同じことを聞いてみてください。
と、こちらの剣幕にこういうことを言うのであった。
西側の病棟の廊下を歩きつつ、ふと気が付いた。相部屋の入り口は開放されており、しかも入り口には入院患者の名前がフルネームで掲示してあったのだ。おまけに担当科のマークが付けてあるではないか。
あーっ、ここだここだ!
病室にたどり着くまでは、一切の関門もなく、誰何されることもなく、いわば全く国境検問も受けずに無防備に病棟内をたどり着けた。
では、いったい案内所やナースステーションでの嫌な思いは何だったのか?
個人情報の保護とは言いながらも、一つの情報がないだけで、後は全ての情報を提示したにもかかわらず、けんもほろろに断られたのは何だったのか?
余程私たち夫婦は不審者に見られたのだろうか。無精髭も伸びていたし、貧相な服装で、ぶっきらぼうな話し方だったから、きっと怪しまれたのだろう。
でも、私にとっては実に腹立たしい対応であった。マニュアル通りの対応しかできない「この石頭め!!」。
個人情報の開示はよく気をつけて、めったやたらに公開すべきものでないことは百も承知している。私は篠山市の「個人情報保護審査会」に席をおいているから、そんな事は百も承知しているのだ。個人情報を開示せよと言っているのではない。この病院の対応は、「頭隠して尻隠さず」だ。
住所・年齢・性別・電話番号・苗字・病気の名前・入院経過状況まで提示しても、ただ一つ、○子さんという名前がでてこなかっただけで、双方不快な思いをしてしまった半日だった。
その時のあんたの顔は恐い顔やったでー。
とは、一緒に行った女房の感想でした。
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