

昭和18年頃からか、日時は定かではないが「報国托鉢」というものが実行された。兵庫県多紀郡古市村に仏教寺院が6ケ寺ある。真宗は東西それぞれ1ケ寺。浄土宗は2ケ寺。天台宗が2ケ寺である。
戦局の雲行きが怪しくなってきたのと、仏教界も挙げて戦争協力という大政翼賛に突入した。いろいろ話を聞いて知っているが、こんな写真が古いアルバムから出てきたのには少々驚いた。私の爺さんになる住職が、饅頭傘を被り杖をついて、まるで親鸞さんのような出で立ちで、白い旗を持ちながら托鉢に回ったらしい。
旗の文字は、皇軍感謝 銃後湲援 報国托鉢 と読める。途中に立ち寄ったのは神社。当時は当然国家神道であり、「大和魂」・「一億火の玉」・「欲しがりません勝つまでは」となって行き、仏教ももっぱら有無を言わさずに戦争協力体制の中に組み込まれて行った。
何人かの坊さんは白い襟巻き?を付けているので、どうも寒い時期に実行したらしい。戦争が終わって65年以上も経たが、今も本堂の廊下の片隅に饅頭傘が掛けられている。
あの傘はどうやらこの時の傘らしい。傘を被って托鉢に回った坊さんは今はもう誰も残っていない。明日は長崎に原爆が落とされた日。先日の広島の日に続いて、有志の方が梵鐘を撞きに来られる。1枚の写真はいろんなことに思いを馳せさせてくれるものだ。(2011.8.8)
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