

11月21日から28日までの1週間、本山(東本願寺)では毎年の報恩講が勤まる。全国からたくさんのお参りがあり、親鸞聖人の言葉に触れるために上山される門徒さんで賑わう。
28日のお勤めには、大谷派独特の「板東曲ばんどうぶし」という、大きく体を降らしながらお念仏を称える様式が組み込まれるが、期間中の24日の「初夜勤行」の途中には『御伝鈔』の拝読が行われる。
午後4時30分から始まるお勤めは、「正信偈草四句目下」に「同朋奉賛式」での『弥陀成仏のこのかたは』次第6首。
それをみんなで唱和が終わると、外陣の柵内に用意された4基の背の高い燭台の巨大な朱蝋に火が点けられ、右余間の『御伝鈔』の前の大きな朱蝋にも火が入れられる。
やがて堂内の電灯が消されると、右余間の奥に灯りが揺らめき始める。
黒衣墨袈裟を着けた二人の若い僧が、大きな朱蝋の灯りを捧げて、その後ろには、『御伝鈔』の箱を乗せた卓を二人の僧と、色衣五条を着けた拝読の僧の5人が、ゆっくりゆっくりと余間から外陣へ降り、聖人の木造の前を横切って行く。右余間(祖師に向かって左側の余間)の切戸口から柵内の左御代前(一般寺院では祖師前)までには5分以上もかけ、暗闇に揺れる蝋燭の明かりの中で演出たっぷりに繰り広げられる。これを「練り出し」という。
卓の前に燭台を置いた二人の僧の内の一人は、燭台の前にひれ伏したまま時間が過ぎて行く。
拝読者はおもむろに箱を開け、その蓋を膝をにじらせながら向きを変えて、自身の右に置き、箱から4巻を取り出して、また箱の身を自身の右に置く。やっと拝読の用意ができて、巻物の紐をほどく直前まで、若い僧はひれ伏したままゆっくりと静かに時が過ぎて行く。
ゆっくりゆっくりと紐を解き、「本願寺の聖人伝絵の上」と読み上げるまでには10分も経過していた。(24日は上巻 25日は下巻が読まれる)
これはよくよく考えられた演出なのだと思う。
堂内は撮影禁止なので、その様子は大谷派(東本願寺)の出版物かHPでどうぞ。
当ホームページの「御伝鈔拝読」にもあります。(写真撮影が可だった頃)
普段は5時に門が閉まるので、夜の「ご影堂」を見ることはない。報恩講の期間も午後5時が閉門なのだが、『御伝鈔』の拝読がある時は午後7時に閉門となる。
1年に一度だけ、大きな提灯に灯が入れられ、お堂の中から灯りが漏れてくる夜景に出遇うことができる。
報恩講にお参りに上洛された住職方が、法衣店にも立ち寄られていた。当に門前市をなすと言うのだろうが、昔は人があふれかえっていたと言われる。2011年は『親鸞聖人750回ご遠忌』が勤まることになっている。
(堂内はいつの頃からか撮影禁止になっている。)
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