涙の数だけ

5年前にガンの手術を。
元気にしていた友達が、最近急に体調を崩した。
お茶やお花の趣味も一緒に楽しんで来た。
人生ではわずかに先輩であったから、いろんなことを教えてもらった人。
その人が救急車で再び入院。
酒井さん、どうして? どうして?
どうして私から友達を奪っていくの?
どうしてまだ若いのにこんな辛い目に遭わねばならないの?
神様や仏様は、そんな苦しみから救ってくれないの?
私はいま、南无阿弥陀仏が言えない!。

泣きながらの電話の声に、私は受話器を握りしめた。

 人として生まれた以上は、若くして、交通事故で、病気で、年老いて枯れ木の朽ち果てるように、病に臥せ、そして、死に様は人それぞれだけれども、誰も残らず死んでいくのだ。

 気がつけば、私の周りからは、私と親しくしていた人がみんな居なくなって、やがて今度は自分の番が巡ってくる。
この世で一緒に生きてきた者同士が、別れていくのは、辛くて悲しい現実だ。

どうして? どうして?

と不満にあがらうことを、お釈迦さまも同じ思いで見つめていた。

あなたもこれからの人生で、こんな哀しみに、必ずたくさん出合っていく。
その哀しみを、ハードルを越えていくように、周りに支えられて生きていく。

あなたの使いたかったこの世での命を、私がしっかり受け継いで、私の中で光り輝くあなたの命と一緒に生きていきますよ。
ありがとう。

私が私であったから、私はあなたに出会えた。
あなたに出合うために、私はこの世に生を受けた。
あなたに出会えてよかった。
私の役目が終わったとき、あなたが先に行って待っていてくれる世界へ、私も行きますからね。
おじいちゃんも、おばあちゃんも、友達も、みんなが行った世界なんだから、私も行けるよね。

そんな思いを彼女に伝えたいね。
泣いたらいいよ。いっぱい泣いたらいいよ。
泣き疲れて、涙がカラカラに涸れたとき、命の光が射してくるからね。


     涙の数だけ強くなれるよ
      アスファルトに咲く花のように
        見るものすべてに おびえないで
          明日は来るよ 君のために

           (Tommorowより)


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