いのちの教え 子どもの胸で生きる


東井義雄さんの東井義雄「いのちの教え」という本の中から
  (ブックコード ISBN4-333-01571-5 C0095)
<転載許可済み>


  小四 亮太

 ぼくのおとうさんは、ぼくの小さいときに死にました。
それでも「とうちゃんは、どこかでぼくのすることを見とるんや」と、かあちゃんはいいます。
 かあちんは、いつも働いているので、家へ帰るのがおそくなります。とうちゃんのぶんも働くからです。

 ぼくが、夕方、戸口のところでまっていると、帰ってきて、頭をなでてくれます。ぼくはうれしくなって「とうちゃんのぶんもなでて」といいます。すると、かあちゃんは「よし、よし」といってなでてくれます。

 この間のばん、ぼくがしゅくだいをやっていると、かあちゃんが「亮太は勉強がすきになったでええな」といいました。「ちがう、きらいや」というと、「勉強のきらいなもんはえらい人にはなれせん」と、かあちゃんがいいました。「へえ、そんなら、おらの組では、健ちゃんがいちばんえらいもんになるんかよ。なら、おら、えらいもんなんか、なりたかねえ」と口答えをしました。
 健ちゃんは、勉強はできるかもしんないが、いばるから、ぼくはきらいです。

するとかあちゃんは、ブスッとしてしまいました。
 ぼくはだまっていましたが、かあちゃんがものをいわないので、だんだん、つらくなりました。

 ぼくは、かあちゃんのところへいって「かあちゃん、たたいて」と、頭をだしました。すると、かあちゃんは「もうええから、勉強しな」といいました。「そんなら、とうちゃんのぶん、たたいて」といいました。そしたら「よし」といって、かあちゃんは、わらいながら、ぼくの頭を、一つ、コツンとたたきました。

 ぼくは、うれしくなって、また勉強をやりました。ぼくは、かあちゃんが大すきです。


亮太君の中に、お母さんは、みごとに、お父さんを生かしていらっしゃいます。
 -東井 義雄-


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